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対テロ総研ーテロの発生原因、対策、影響を考える

テロの発生原因、企業の取るべきテロ対策、企業活動への影響等をわかりやすくお伝えします。

テロリストにテロをやめさせるには?ーIRA構成員が獄中で語ったこと

こんにちは、ネコテックインダストリーアナリストの桃井です。

テロリストがテロをやめようと決断するときとはどういうときなのでしょうか。彼らは自らをどういう状況下にあると認識し、テロをやめるという決断をしたのでしょうか。

実際元IRA構成員がこうした疑問について証言しています。

 

テロ行為の効果が実感できず士気低下

1980年代に入り、英国当局は治安対策を強化しました。北アイルランドSASやMI5といった特殊部隊や諜報機関が続々と送り込まれ、3年間で数百人におよぶIRA幹部の拘束に成功します。こうした時期に収監されたある元IRA幹部は自分たちの暴力路線に疑問を持った瞬間を「自分が投獄されている刑務所に他の構成員が次々と送り込まれてきたとき」であると答えています。これ以降彼はテロ行為を自分たちの目的の達成に有効なのか否かの判断がつかなくなったと答えています。また、こうした状況がいつまで続くのかといった厭戦気分も広がっていたと語っています。

他の構成員はテロ行為を続けることにより「疲弊するのは英国政府ではなくIRAなのではないか」といった無力感にとらわれたと言えます。いくらテロ行為を行っても、主張している領土の掌握は叶わず、かえって当局の治安対策強化を招き大量の拘束者を出したことがこうした疑問や無力感を増幅させたと考えられます。

ベテラン活動家であったケリー(John Kelly)はこの時期に「相手陣営の人物の殺傷は、かえって当局の強硬姿勢を招き逆効果である」との認識がIRAの幹部の中で広がったと語っています。

武力闘争路線がIRAにとって何の利益も得られない非合理的なものになったという事実、つまりテロ組織がテロをすることで得る利益があると認識する直接的原因が解消されたことがIRAの武装放棄に大きく作用したと言えます。

 

直接的原因を根絶すること(短期的視点での対策強化)が重要

上記のIRAの事例から、テロリストがテロをやめるきっかけになるのはテロの直接的原因を排除されたことと言えます。これは言い換えるとテロリストにテロを起こしても何も得るものがない、自らにとってマイナスに作用すると認識させるということになります。IRAの事例だと、当局の治安対策強化により計画段階でテロを阻止されたり、大量の構成員を拘束されたこと、いくらテロを行っても英国政府の動揺を誘うことができなかったことから、自らの暴力路線に疑問を持ちテロをやめるきっかけとなったと言えます。この事例から言えることは何なのでしょうか。

 

根本的原因に絞った対策(長期的視点での対策強化)のみではテロをやめさせることはできない

1998年にIRAは正式に英国政府との停戦に合意し、暴力路線の修正を図りました。これにはもちろんテロの根本的原因の解消(IRAの政治参加、北部6州の帰属をめぐる国民投票の許可)も作用していましたが、上記のIRAの幹部の証言からは英国政府が取った治安対策強化という直接的原因の解消がまず最初に作用したと言えます。実際こうした背景からIRAは英国政府との交渉のテーブルについたとされています。

つまり、テロを早急にやめさせるには、まず自分たちのテロ行為が無駄であると認識させることが必要になります。

根本的原因の解消、つまり政府との交渉や、経済支援等の長期的視点での対策のみではテロリストにテロをやめさせるきっかけにはなりにくいと言えます。こうした対策はもちろん重要ではありますが、差し迫ったテロを防ぐという短期的視点で効果を発揮することはありません。テロリストにまずテロをやめさせるには、治安対策の強化や企業、個人で取れるテロ対策(危険箇所を耐爆仕様にする、監視システムの強化等)を施し、テロ行為が無駄であると認識させることが重要になります。

 

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nekotech(テロ対策を考えるーネコテックインダストリー)

Email: kmomoi@nekotechindustry.com