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対テロ総研ーテロの発生原因、対策、影響を考える

テロの発生原因、企業の取るべきテロ対策、企業活動への影響等をわかりやすくお伝えします。

民主主義国家はテロ問題が起きにくいって本当?

こんにちは、ネコテックインダストリーアナリストの桃井です。

先日も同様の質問をいただきましたが、よくいただく質問に「民主主義国家はテロ問題が起きにくいというのは本当?」というものがあります。

民主主義国家は反対派に対するチャネルが開かれているため、わざわざテロのような暴力行為に走らなくても自分たちの大義や見解を表明することができます。こうした観点から民主主義国家ではテロ問題が起きにくいのではないかということのようです。

実際のところどうなのでしょうか。

 

研究者によってはそうした主張をする人もいる

実際研究レベルにおいても民主主義国家とテロリズムの関係は議論されています。当然様々な立場の研究者がいるのですが本日は二人の意見を紹介したいと思います。

 

①民主主義国家はテロが起きにくいとする意見

民主主義国家とテロリズムの関係を研究課題に掲げるウィルキンソン氏(Paul Wilkinson)は民主主義国家ではテロリズムが起きにくいとしています。その理由は冒頭で述べたものと全く同様です。つまり、民主主義国家では反対派に対する意見表明やデモ等の自由が認められているため、テロという暴力行為をあえて選択する必要がないということです。該当する例としては北アイルランドをめぐるテロ問題が挙げられます。この問題を英国が解決できたのもIRAを始めとする分離派の政治参加を認めたからとも言われています。

 

②民主主義国家であっても関係なくテロが起きるという意見

主に北アフリカのテロ問題の研究を中心に幅広くテロリズムを研究しているクレンショー氏(Martha Crenshew)は、実際の状況にかかわらずテロリスト側が何かしらの不満を感じている際にテロを起こすと主張し、国家体制については関係がないとしています。実際、現在主流となっているイスラム過激派によるテロは民主主義のお手本とも言える欧米諸国で頻発しています。

 

テロは国家体制にあまり関係なく発生する

 現在世界各国でテロ問題を引き起こしているISISを始めとするイスラム過激派によるテロも含め、テロは民主主義国家であろうがなかろうが、発生しています。たとえば以下は西欧諸国と中露両国における2001年から2014年までのテロの発生件数です。

 図左:2001年から2014年までに西欧諸国で発生したテロ件数

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                       図右:2001年から2014年までに中露で発生したテロ件数

 

いずれもGTD調べによるものですが、これによると西欧諸国、中露双方とも2010年にかけて大きく増加しています。こうした傾向を鑑みるに、「民主主義国家はテロが起きにくい」という仮説は当てはまらないものと思われます。ちなみに上記データは2014年9月までのものでそれ以降のデータについては公開されていません。そのため2014年のテロ発生件数は減少しているように見えています。

実は先に「民主主義国家はテロが起きにくい」という説を唱えたウィルキンソン氏も「近年対等しているイスラム過激派についてはこの限りではない」としています。彼のいう通り、イスラム過激派は民主主義国家も非民主主義国家も区別なく敵対宣言をしています。また、それも先に述べたIRAと異なり敵対陣営に対する攻撃そのものや殲滅を目的としているため、交渉や停戦合意といった民主主義国家が取りうる選択肢を受け入れない可能性の方が大きいと思われます。

たとえばコーカサス地域を拠点とする過激派組織のひとつ「カフカス首長国」の初代首領ドク・ウマロフ(Doku Umarov)は以下のように述べ、民主主義、非民主主義の区別なくムスリムに敵対する陣営に対して聖戦を宣言しています。

「今日、アフガニスタンイラクソマリアパレスチナにおいて我々の同胞たちが戦っている。イスラムを冒涜する者は皆敵である。我々の敵はロシアのみではない。米国、英国、イスラエルイスラムムスリムに敵対するすべての者が我々の敵である。」(Nikolai Grodnenskiy, Vtoraya Chechenckaya-Istoriya voorudennogo konflikta, (Russkaya Panorama, Moskva,2010) )

 

上記下線部からもわかるように民主主義、非民主主義の区別なく敵対を宣言しています。今後もこうしたイスラム過激派によるテロは民主主義国か否かといった点は関係なく続きそうです。

 

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nekotech(テロ対策を考えるーネコテックインダストリー)