対テロ総研ーテロの発生原因、対策、影響を考える

テロの発生原因、企業の取るべきテロ対策、企業活動への影響等をわかりやすくお伝えします。

解決できるテロ問題とできないテロ問題の違い

こんにちは、ネコテックインダストリー対テロ調査チームアナリストの桃井です。

 

今やテロは世界的な広がりを見せており年々発生件数は増えつつあります。

テロのデータベースとして最も参考にされることの多いGTD(Global Terrorism Database)によると2014年には16,818件のテロが発生していますがこれは2004年に発生した件数(1,156件)の10倍以上にもなります。

 

        1. 2004年から2014年のテロの発生件数(出展:Global Terrorism Database)

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こうして見ると世界的にテロが増えているという指摘は正しいのですが、実はテロの問題を解決し劇的にその発生件数を低下させた事例があります。

それが英国の北アイルランド問題です。

 

テロの発生件数が劇的に低下!英国の戦略とは?

英国は長きに渡って北アイルランドの帰属をめぐりIRAを筆頭とする独立派テロ組織のテロの標的にされてきました。しかし1998年の独立派勢力との停戦合意を経て2004年には英国内でのテロの発生件数を5件にまで低下させました。

 

2.1970年から2004年の英国におけるテロの発生件数(出展:Global Terrorism Database)

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なぜこうしたことが可能になったのでしょうか。

それは英国がテロの「根本的原因」と「直接的原因」の双方での解決を図ったことが挙げられます。テロ問題の解決はこの2点からのプローチが不可欠とされています。

それぞれの原因とその解消法をわかりやすくまとめると以下になります。

 

根本的原因

歴史的な民族紛争や領土問題、経済格差、宗教問題等暴力に結びつきやすい問題があること。

解消法:テロ組織と当局の政治的合意。

 

直接的原因

テロを起こしやすい環境下にあり、テロ組織もテロを起こすことに利益を見出していること。

解消法:当局の治安対策強化によりテロを起こすことのリスクを強く認識させること。

 

英国は1998年の停戦合意により旧IRAメンバーの釈放や北アイルランド地方自治議会の設置、帰属を決める将来的な住民投票の施行の容認等の譲歩を行い根本的原因の解消に努めました。IRA側もこれを受け入れ武装闘争路線を破棄することになりました。

また英国は同時にSASやMI5等の特殊部隊、諜報機関を投入し、テロの事前抑止に努め3年間で数百名のテロリストを拘束しています。これによってIRA側も自分たちのテロが当局の治安対策強化を招き逆効果になっているとの認識に変わったとされています。

 

それでも解決が難しいテロ問題とは?

こうした成功例がある一方で解決が難しいテロ問題とはどういったものがあるのでしょうか。

それはISISアルカイダをはじめとした宗教型のテロ組織の存在です。

宗教型テロリズムの危険性については以前にも紹介しましたが、こうした組織に関しては根本的原因の解消、つまり政治的合意に至り難いものとされています。

ISISはなぜ市民の殺害を好むのか?ー宗教型テロリズムの厄介な特徴 - 対テロ総研ーテロの発生原因、対策、影響を考える

テロ行為自体が彼らの目的となりつつあり、それを止めさせるというのは困難を極めます。実際、北アイルランドと似た問題構造を有しているロシアのチェチェン北コーカサスにおける武装勢力は現在では独立問題よりも、聖戦に重きを置く組織へと変貌しつつあります。こうした組織のひとつである「カフカス首長国」の当時の首領であったウマロフ(Doku Umarov)は組織結成時に「敵はロシアのみではなく米英、イスラエルなどムスリムに敵対するすべての者である」と主張しています。

 

テロ組織側との対話が難しい現状では、テロの事前抑止やテロが発生した際の被害抑制影響の分析が重要となってくると思われます。

 

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