対テロ総研ーテロの発生原因、対策、影響を考える

テロの発生原因、企業の取るべきテロ対策、企業活動への影響等をわかりやすくお伝えします。

テロってそもそも何?- ②何故国によってテロリズムの定義が異なるか

こんにちは、ネコテックインダストリー対テロ調査チームアナリストの桃井です。

 

さて前回国によってテロリズムの定義が異なる点をご紹介したかと思います。

まとめると以下の違いがありました。

 

*米国:市民への暴力行為
*ロシア:反国家的な暴力行為
*日本:攻撃対象に対するもののみではなく市民等の第三者に対する暴力行為

 

この違いは何故生じるのでしょうか。

まずひとつ認識すべき点がテロリストという言葉は良い意味で使われることはないという点です。一方の勢力が敵対する勢力をテロリストとして糾弾することでその敵対勢力を一方的に「悪」としてレッテルを貼る力が発生します。それぞれの国が悪い意味でテロリストとして敵対勢力を認識しているのです。このそれぞれの国が対峙するテロリストが起こすテロがその国にとってのテロリズムの定義と同義になるのです。それが日米露で異なるということになります。

 

この認識の違いが顕著に出た例があります。

2013年に発生したシリアの首都ダマスカスのロシア大使館付近で自由シリア軍によるものと思われる爆弾テロがあり53人が死亡するという事件がありました。ロシアはこのテロに際し、いかなる場合もテロは容認できないとする文言を国連安全保障理事会共同声明に盛り込むことを強く主張しましたが米国の強い反対もあり頓挫しました。これに対してロシアのラブロフ外相は「米国はテロリズムに対してダブルスタンダードである」として不快感を示します。

 

ロシアは自由シリア軍という現存政権に対する反国家的側面からテロリズムと扱うべきとしたのでしょう。ロシアにとってのテロリズムの問題とはチェチェン独立派をはじめとする分離主義的、反国家的な勢力です。こうした組織に譲歩を許せば北コーカサス地域一帯の不安定化につながると危惧しています。こうしたことからロシアにとってのテロリズムとは反国家的なものであるという認識につながったと考えられます。

 

一方の米国はアサド政権側の市民への暴力行為こそがテロリズムであると認識している面があります。これに抵抗する自由シリア軍をテロ組織として扱う点に抵抗があったのでしょう。米国にとってのテロリズムとは国家が行うものも含む場合が多く、「国家テロリズム」という概念(スターリン政権期に行われた大規模な粛清等国家が行うテロリズム)も同国のテロリズム研究においてはひとつの分野として成立しています。米国にとって自由シリア軍はこの国家テロリズムと戦う存在であるということになります。

 

もちろん米露の国際政治上でのゲームの一環としての側面もあったかとは思いますが両国のテロリズムの定義が異なる点からもこの対立の説明ができます。

 

では我が国の定義は何故このようなものになったのか。

次回はこのテーマについて検証したいと思います。